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一つの旅

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ようこそ
わたしの口の中へ 肺の中へ 血の中へ
遠い国から やって来たのだろう
山を越え 海を渡り やって来たのだろう
砂漠を ジャングルを 通り抜けて
大都会を 田舎町を 通り抜けて
遥かな旅路の果ての果てが このわたし
偶然的にか 必然的にか 知る由も無いが
おまえは今 わたしの中にいる


ようこそ そして さようなら
おまえは今 わたしの元から離れて行く
今までそうして来たように これからもそうして行くように
終わると同時に また旅が始まる
草木の中を通り抜けて 人々の中を通り抜けて
いくつもの いくつもの 生命の中を通り抜けて
そうやっておまえは 旅から旅へをくりかえし
いくつもの いくつもの生命に
今日の命を与えて 今この時を与えて
回り回っているのだろうか
おまえは今 どこを旅しているのだろうか
いつの日か再び 来るのだろうか
果たしてその時は 来るのだろうか
わたしたちが再び 一つになる時が


目を閉じて 深く息を吸う
できるだけ できるだけ深く


ようこそ そして さようなら
目には見えない たった一つの
この星の空気よ

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